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小説の墓場

剣舞の錬金術師 第二話「ブリックスの奇跡」

第二話「ブリックスの奇跡」

 

マイルズに並存したエミヤ。さて今日はオリヴィエ司令官に秘策の実証を証明するときだ。 

 

******

 

<マイルズ、朝だぞ?>

 

「ん・・・・・・もう朝か。にしても相棒が目覚ましになるとわな」

 

<私は休息が必要のない存在であるからな、ずーっと起きていたわけだ>

 

「そうか。なら、早いところ錬金術の本などを登録して、その時間に勉強してもらいたいな」

 

 

<ああ、そうしてほしいところだ。そのためだが、特殊演習が終わるまで、この身体を使わせてもらえないだろうか?>

 

「ああ、いいぞ。存分に使ってくれ」

 

<ありがとう。マイマスター>

 

エミヤは、身体の主導権を担い、軍服に着替えて朝食を食べに行った。場所は移り、食堂。食器を手に取りながら、近場のテーブルに腰掛けた。

 

「お?マイルズ、今日はいつもより朝が早いな!」

 

食事をトレイに持って来つつ、声をかけてきたのは、もう一人の少将の側近、バッカニア大尉だ。自然と隣の席にドシン!と腰掛けた。二人分の席を有するほど、身体が大きいためだ。

 

「ああ。大尉。今日は特殊な用事が10時からあるのでな、そのため準備が必要なわけだ」

「特殊な準備っというと、その時間は演習だな?」

「ああ。そうだ。しかし今日は特殊演習を行うことになったのだ」

「特殊演習?山岳中での演習か何かか?」

「いや、私が以前から研究してきた技術を披露するための実験のようなものさ」

「マイルズが以前から、研究してきたもの・・・・・・?そんな素振りは見てこなかったぞ?」

「ああ、寝る前に少しづつ研究してきたからな」

「そうか。その結果が少将の目にとまったのなら、いい研究だったんだな」

「そうだな。大尉、食後すぐにすまないが、その研究の一部分を見てくれないか?」

「ああ、いいぞ。少将がこのブリックスに必要と評価した技術なら、興味がある」

「ありがとう。リハーサルとして見て欲しい」

 

二人は、食事を食べ終え、7時半からの軍務の開始まで屋上のスペースに移動した。現時刻7時。ブリックス要塞の屋上はとても風が強く、寒いが監視の兵以外は誰もいないので、魔術の行使には的確な場所だ。

 

「ここなら、何も憂い無く行使できるな」

 

マイルズは、剣を握るような姿勢を構えた。

 

「トレース・オン!」

「!」

 

バッカニアの驚きと共に、マイルズの両手にシンの国風の剣が出現した。

 

「錬成反応がない!?そ、それは錬金術ではないのか?」

「・・・・・・これが我が研究成果、魔術の一端だ。そして!」

 

投影した二つの剣をマイルズは、空中に放り投げると、円を描くように剣同士が引き合い、次の一言で爆発した。

 

「壊れた幻想<ブロークンファンタズム>!」

 

ダダダダーン!!!

 

この一言により、爆発が起こった。

 

「なんだとっ!?剣が爆発した・・・」

 

監視していた兵が、こちらの爆発に気づき、こちらに向かってくる。

 

「これが研究成果の一端だ。この研究の成果の集大成を10時からの特殊演習で披露する」

 

監視兵が来た。

 

「どうしたのでありますか?さっきの爆発は?」

「いや、新技術のテストをしていたのだよ。こちらは問題ない。監視を続けてくれ」

「はい!了解いたしました。では」

 

監視兵は元の仕事場に戻っていった。

 

「すごい、すごいぞマイルズ!これなら、ドラクマに対して優勢の勢いで攻め込めるな!」

「ああ。この技術が習得できればの話になるな」

「ということは?この技術は習得が困難なのか?」

「ああ。初歩的な技術ならば、半年かけて習得できるかもしれないが、生憎、私の研究しているそれは異端な技術でな、本来の魔術の手法とはかけ離れた技術なんだ」

「そうか。でもその技術が使えるのならば、戦力としては国家錬金術師に匹敵するほどじゃないか!」

「そうだな・・・と、もう7時半前だな。軍務準備をしよう」

「ああ。10時の特殊演習が楽しみだな」

 

二人はエレベーターでオリヴィエ・ミレ・アームストロング要塞司令官のいる司令室に向かった。

 

コンコン・・・

 

「誰だ?」

「はっ、バッカニア大尉とマイルズ小佐であります」

「入っていいぞ」

 

二人が入室した。

 

「今日は、3分ほどいつもより遅かったな。何かあったのか?」

「はい、マイルズの研究成果を拝見させていただきました」

「マイルズ、あれを見せたのか?」

「はい。演習の際に驚かれても困りますから」

「ふふ。そうだな・・・・・・して演習の準備は万端か?」

「大丈夫です。閣下。問題ありません。具体的な内容を報告してもいいでしょうか?」

「そうだな。あまりにも時間がかかっても兵士達を待たせてしまうからな」

「私が行う秘策とは、魔術の中でも禁忌の術である、"固有結界"というものです。この結界を発動するためには1分ほど詠唱時間を有します。そして10分ほど結界を維持できます。その結界内であれば、通常ありえないことがありえる世界となります」

「・・・・・・ほう。楽しみだな。」

 

ーーー

ーー

 

そして、時間が過ぎ、特殊演習の時間になった。場所は、7時にバッカニア大尉とテストをした場所と同じく屋上の中央だ。ドラクマとの軍事国境線を前にする位置でもある。

 

「・・・ではマイルズ、十二体の人形を仮想敵として、秘術の奥義を実行せよ」

「了解しました。では・・・・・・!!」

 

周囲の空気がマイルズに褶曲するような印象をアームストロング少将は感じた。

 

<なんだ・・・この気は・・・なにが起ころうというのだ>

 

「I am the bone of my sword.

 ーーー体は。剣でできている。

Steel is my body, and fire is my blood.

 血潮は鉄で 心は硝子。

I have created over a thousand blades.

 幾たびの戦場を越えて不敗。

Unknouwn to Deth. Nor known to Life.

 ただの一度も敗走はなく、ただの一度も理解されない。

Have withstood pain to create many wepons.

 彼の者は常に独り 剣の丘で勝利に酔う。

Yet,thouse hands will never hold anything......」

 故に、生涯に意味はなく。

 

マイルズは、終曲を奏でるように手を天にかかげた。

 

「...So as I pray,Unlimited blade works.....」

  その体は、きっと剣で出来ていた。

 

紅の光が辺りを覆った。その時、世界が湾曲した。次のシーンを見た者は、忽然と立ち止まった。赤い世界に居たのだ。さきほどの屋上ではなく。参加した兵達は唖然としていた。大きな歯車が背後に回転し、周囲に数多の剣がまるで墓石のように乱雑に配置されていた。

 

「この秘術こそ、我が固有結界"無限の剣製"です。閣下。そしてこれから行う攻撃はこの結界を駆使して行う攻撃です・・・」

 

"無限の剣舞!!<アンリミテッドブレイドダンス>"

 

マイルズの声が大空間に響きわたった!すると、埋もれていた剣達が引き抜かれ、その数は100を超える数になった。それがマイルズの手先の方向により、まるでダンスをするかのように、舞った。

 

「はっ!行け!」

 

その一声に、仮想敵である十二体の人形に切りかかった・・・!!見るも無惨に原形を留めることなく数十の傷を、すべて致命傷の部位に刻みつづけた・・・

 

「終わりだ!」

 

マイルズの周囲にあった武器が持ち上がり、空中高く上昇し、上空100メートルに到達したところで、一気に急降下し、十二体の人形を殲滅するように深く刺さった。中には、人形を括り付けた棒が四散しているものも多くある。原形と留めていないことはすべてに共通するほどだ。

 

この間、5分ほど。

 

「閣下、終了しました。次は"無限の弾幕"ですね?」

「・・・あ、ああ。よろしくたのむぞ」

「それでは、射撃兵ども!仮想敵に射撃を開始せよ!銃弾の補充は一切考えるな!撃ち放て!」

「おおおお!!!」

 

ドドドドドドドドッッッッッッッ!!!

 

"無限の弾幕!!"

 

マイルズの一声で既に弾倉が絶える時間になっているにも限らず、仮想敵に次々と弾幕が張られていく。

 

「うむ。私もその一に加わろう・・・・・・"魔弾の射手!!"」

 

マイルズは、旧式の銃を投影したかと思うと、丸弾を一つこめて発射した。その弾丸は一つであったのに、弾丸はくねくね動きながら、仮想敵すべての心臓を貫通した。

 

「・・・これほどとは・・・」

 

オリヴィエは、感嘆の声を出した。滅多に驚かない彼女が驚くほど、その魔術は的確に的を射抜いていた。

 

そして、5分後、世界は元の世界になり、弾幕も終わった。跡に残ったのは、棒だけになった仮想敵であった。塵一つ残さず、完膚無きまでに四散していた。これが軍隊とであった場合、十二分に殲滅できる威力だ。

 

「・・・マイルズ、その秘術は一日に何回ほど行使できるのだ?」

「はい。これは秘術中の秘術であるため、一日に最高二回までが限度です。それ以上の行使は術者の負担が上昇するため、三分が限度になります」

「そうか。分かった」

「・・・・・・閣下。頼みがございます」

「なんだ?マイルズ」

国家錬金術師の資格を取得しに、中央司令部に三ヶ月ほど留まっても良いでしょうか?」

「・・・ふむ。確かに、兵力として資格を取得するのも良いだろうが、貴様が居なくなった間に敵が攻めてきた場合、さきほどの秘術を駆使できんのは寂しいものだ」

「では、私の秘術をもって、武器類の素材の強化と必要な武器の投影をさせてもらいます。それで私の不足分を補うという形では、どうでしょうか?」

「・・・うむ。良いだろう。武器の耐用が延長されるのなら、良いことだ。ではマイルズ、国家錬金術師になって帰ってこい!これは命令だ」

「はっ!閣下。了解です・・・・・・これにて、特殊演習を終了とする!」

 

マイルズが行使したことは、要塞中に広まった。"ブルックスの奇跡"と称された固有結界は、一枚岩の彼らの結束の賜物だと賞賛された。そしてマイルズに対する人望が厚くなることは必然であった。

 

マイルズが中央司令部に旅経つ間、兵器部に一時的に在籍し、既存兵器の強化を魔術で行う特殊行使をして回った。その強化は、装甲の強化であるが、今までの装甲の三倍を超える強化になった。

 

そして、その後にマイルズは鉱石のレッドアイの研究を行っている二人に会いに実験室に向かった。

 

コンコン・・・

 

「私だ。マイルズだ」

 

「どうぞ!」

「実験の方は、どうだね? レイン?」

「はい!動物実験の結果、レッドアイの餌入りのものを飲んだ十匹中、三匹のラットが生還し、その内、一匹が二足歩行するラットになりました」

「二足歩行?ラットがか・・・・・・ふむ。人間か猿人類の自我が芽生えたのかもしれないな」

 

それまで、実験に集中していたケインが話した。

「この鉱石はいったい、なんなんですか?強制進化させるような鉱石は聞いたことがありませんよ・・・」

「仕方ないか。この鉱石の本当の姿を説明しよう。このことはまだ、アームストロング少将にも言っていない話だ。他言無用にするように」

「はっはい!」

 

 

「レッドアイは、天然の賢者の石だ」

 

 

「えっ、賢者の石って、錬金術者が求める最高の礼装じゃないですか!」

「しかし、鉱石として、どういう状態で生成されるのかどうかはまだ、解明できていない。その情報の原本である、祖父が研究していた研究書の解読が進んでいなくてな、これらを解明するためには、錬金術の研究が必要になってくる」

「そうですか。そうすると、中央司令部に行かれるのですか?」

「ケイン、気付いたか。そうだ。国家錬金術師になるためにこれから、中央司令部に行ってくる」

「やはりそうでしたか。マイルズさんが不在の時も研究は進めるので、安心して行ってきてくださいね」

「頑張ってきてください!」

「ありがとう。ケイン、レイン。行ってくるよ」

 

そしてマイルズは研究室から出発した。場面は変わり、ブリックス正面玄関。そこには、オリヴィエ司令官とバッカニア大尉がマイルズ小佐の出発を見送るために来ていた。

 

「ありがとうございます。司令官

「なに、こういう時ぐらいは、少将と呼べ」

「はっ。少将。行ってきます」

「うむ。成長してこい」

「必ず、資格をとってきてくださいよ、マイルズ小佐!」

「ああ。必ずとってくるさ。バッカニア」

 

駅送迎用の車に乗りこんだ。

 

「では、行ってきます。仮にドラクマが攻めてきたときは、強化した装備類で戦闘をお願いします。では!」

 

敬礼し、駅へ送迎車が発進した。

 

「・・・・・・行ってしまったな。バッカニア、マイルズが帰ってくるまで負担をかけると思うが、良いな?」

「はっ。豪快な船にのったつもりで大丈夫でさぁ!」

「ふむ。頼もしいな。戻るぞ」

 

そして二人は、要塞内に戻っていった。

 

ーーー

ーー

 

時は変わって中央司令部。

 

ロイマスタング大佐とその部下の部屋。

 

ホークアイ中尉が今日のスケジュールを報告しようとロイの席の横に立った。

「今日から、三ヶ月の間、北方司令部よりマイルズ小佐が大佐の部下として着任するそうです。大総統が国家錬金術師の資格取得を特別に許可されたそうです。三ヶ月の間ですが、要塞ブリックスの司令官、アームストロング少将から、"短い間だが、貴様の部下になることなら致し方あるまい。三ヶ月の間、みっちり部下としてつかってもらっていいぞ?"とのメッセージをもらっています」

「ふむ。あの少将がか。にしても錬金術師の素養を持っていたのか。そのマイルズ小佐についてもっと詳しく教えてもらえないか?」

「はい、祖父のイシュヴァール人特有の肉体をもつ、アメストリス人です。4年ほどまえから、少将の側近として活躍し、ドラクマからの攻撃への迎撃指揮など少将の指示を的確に遂行する活躍を見せています。最近までは、ブリックス山で採石される貴重な鉱石の研究をしていたそうです」

「・・・イシュヴァール人か・・・そうか・・・して、その鉱石の研究とやらは何なのだ?」

「プロフィールにはそれまでの記載しかありません。直接小佐に言ってみたほうがよろしいかと」

「そうか。了解した。席に戻って良いぞ」

「はっ」

 

ロイ<やれやれ、少将も無理難題を部下にやるものだな。しかし利き腕に値する側近を私の部下に配属するとは、こちらの手の内を盗むようなまねだな。彼には気を引き締めなければなるまいか・・・・・・>

 

「これからが楽しくなるな」

「?・・・・・・どうされました?」

「いや、なに楽しくなってきたと思ったのさ」

 

次回へつづく

 

 

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やっと終わりましたね。作成文字数は約6000字でした。これくらいがいいのかな。5000字程度がストーリー的にも進みやすいのでこれくらいを目指していきますね。話的には、ようやく中央司令部に期間限定で配属されるようになりました。国家錬金術師としてのマイルズ小佐の活躍が期待されますね。

 

ではまた。