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小説の墓場

剣舞の錬金術師 第五話「錬成魔陣」

第五話「錬成魔陣」

 

前回は、試験を受け終わったところで終わりましたね。次は、試験の結果が通達されるまでの一週間の出来事を書いていきます。

**********

 

話は、筆記試験開始直後の時から始まる。

 

試験会場待合室。

 

エドとアル、マスタング大佐は、待合室で話していた。

 

 

「やっぱり、さっきの実技試験での反応は、無色だったよな。アル?」

「どうだよね。遠目でしか確認できなかったけど、普通に錬成した後に一言呪文のようなものを言った直後に、石の剣が鉄の剣の光りに変わったよね。あれは錬金術でも賢者の石でもない、魔術、錬成魔陣というやつなのかな」

「う~ん。わからない!くそぉ・・・・・・大佐は何かわかったのか?」

「私か?そうだな。一ついえるのは、錬成陣が明らかに異なっていたことだ。あれは錬成魔陣というやつだろう。最初っから彼は、錬成魔陣をやったわけだ。その証拠に錬成光は青色であったので、錬金術の流れをくむものであることは明らかだ」

「そうか。大佐の意見は確かにそうだな。難解な錬成陣だったことは確かだったよ」

「そうだろう?あれを短時間で書けたことも、驚くべきことだが、魔術とは、恐ろしい力を秘めているかもしれんな」

「確かに。ただの花瓶をダイヤモンドに、強化するなんて、等価交換の原則から離れているしな。いくら遺伝による継承しかできないとしても、確か、錬成魔陣ならそれらの問題は関係ないって言っていたから、魔術のことを知りたくなったよ。にしても、うがぁーーーー!!」

 

「鋼の、うるさいぞ。待合室なのだから静かにしておけ」

「だって、だって、ここまでもう少しで目的が達成されるかも知れないというのに、錬成魔陣はまだ研究段階というし、こう、もう少しで手で触れるところにあるのに、雲を掴むような感じで消えてしまうようで歯がゆいんだ!」

「それは、仕方あるまい。マイルズが試験を終了するまで待つしかないだろう」

「そうだよ、兄さん。興奮してても何も始まらないよ。ここはゆっくり時間が来るのを待つのみだよ」

「・・・・・・はぁー。イライラしつつドキドキするこの気持ち、俺が試験を受けたときと同じなんだよな。あー歯がゆい」

「そうか。エドが試験を受けて1年以上がたつのだな。鋼の錬金術師として今の心境はどうだ?」

「まあ、ようやく目的のひとかけらに出会えた感じがするよ」

「そうか。それならいいのだが・・・・・・っともうじき試験が終わることだな」

「もう、そんな時間か。マイルズさん大丈夫かな」

「彼の心配は、無用だ。それより君の心配の方をしたほうがいい」

「えっ?」

 

大佐は、やれやれという手格好をしたかと思うと、真剣な目でエドを見た。

 

「どういう理由であれ、研究途上の新技術を継承するということは、危険をはらむことだ。それをして万が一、エネルギーの暴走が起こった場合、君はうまく対処できるのかな?」

「うっ・・・・・・それは・・・・・・どうにかしてみせるさ・・・・・・」

「まったく。無鉄砲なことだな。しかしそれほど真剣なことはいいことだが、その無鉄砲さが起因してやっかいなことに手を出してしまうことはよしてくれよ。エド、君のためでもあるのだから」

「ああ・・・・・・大佐。わかっているよ。運命を決めたあの日から、俺の運命は変わったんだから。アルの身体と俺の手足を元に戻すために」

「そうか、それならいいのだが」

 

ガチャ・・・

 

「あっ、来たよ兄さん」

 

マイルズが試験室から出てきた。表情は晴れ晴れとした様子だ。

 

「マイルズ、どうだった?・・・余裕かねその顔なら」

「はい、大佐。確認を十分にできるほどでした。満点の自信がありますよ」

「それは、手強いな」

「マイルズさん、試験結果が出るまでの間、できたら錬成魔陣のことを少しだけ教えてくれませんか?」

「おい、こら、鋼の・・・合格通知が下されるまで待てと言っただろうに」

「ハッハッハ。いいのですよ。大佐。こうもお願いされたら教えなければならないですから」

「いいのか?マイルズ。実験段階なのだろう?もし危険が及ぶようなことでは、彼らの未来を潰しかねない・・・・・・」

「大丈夫ですよ。安全が証明された術から教えていきますので」

「そうか、ならいいのだが・・・」

 

「では、場所を移動しましょう。ここではできませんから」

 

そして四人は、錬金術のトレーニングルームに移動した。ここならば、錬成陣などの行使を行える。早速、マイルズは、授業を開始した。そばでマスタング大佐も見守っている。

 

「では、エド、アル、この紙に書いてある"二重丸"の錬成陣を見てくれ」

「はい!(兄弟)」

「これが、錬成魔陣の基本形だ。この中央の丸に錬金術でいうところの錬成陣を明記する。そして外周の丸に魔術の文様を記述する。そのパターンは、錬金術の二乗だ。しかし、中には高位のレベルではなくては行使できないものがある。では、さっそく簡単な強化の錬成魔陣を組んでみよう」

 

そういうと、マイルズは手元にあった木の棒を二本、兄弟に手渡した。

 

「これを鉄と同等の物質に強化してみるのが、最初の課題だ」

「木を鉄に?非金属物質を金属に変えるのか。確かにこれは錬金術ではないな」

「いままでの錬金術の常識の枠に、捕らえられないようにしなくちゃね」

「そうだな。アル。イメージはあるから書いてみるか」

「うん!」

 

そして、エルリック兄弟は、外周の錬成陣に紙に書いてあるものを写し書き、内周の錬成陣に鉄に変えるものを描いた。そしてそれに両手を合わせた。

 

メキメキメキ・・・・・・という、音がしたと思うと、木は金属物質特有の輝きを見せ、キーンという効果音を出すほどになった。鉄に変成した。

 

「よし、良い変成反応だ。最初の課題は合格だな」

「やりぃぃ!やったな、アル!」

「うん。兄さん。これを応用すれば、土から水が作れたりするね」

「そうだな!等価交換の原則とは異なるんだな。これなら1から10を作ることができるな!」

 

「いや、そうではない」

「へ?」

「錬成魔陣は、魔術を疑似的に再現して使っているので、魔術のエネルギーである空気中のマナからのエネルギーと、術者体内の魔術エネルギーを増幅機にして行使している。そのため、術者のエネルギーが減少してしまった場合、1から3さえ作れなくなる」

「それじゃあ、瀕死の時に使えなくなるんじゃあ?」

「いや、空気中のマナがすこぶる濃ければ、大丈夫だ」

「・・・ほっ・・・それならいいんだけど・・・」

 

錬成場にマスタング大佐が入ってきた。

 

「マイルズ、一つ質問あるのだが、いいかな?」

「はい。大佐」

「私の焔の錬金術は、空気中の酸素に着火布を利用して焔を出しているのだが、もし、仮に雨が降っている環境下では水により着火することができない。その場合、錬成魔陣ならば、そのような状況でも焔を出すことが出来るのだろうか?」

「そうですね。水分があれば酸素を分解することが出来ますので、錬成魔陣は、純粋なエネルギーを発することができるので、水分があれば強制的に強い炎をだすことは可能です」

「そうか、よかった。ほっとしたよ。すまんが、その錬成魔陣の錬成陣を書いてくれないか?試しにやってみたいんだ」

「わかりました。彼らの授業が終わった後でいいでしょうか?」

「ああ、その後でいい。よろしくたのむよ」

 

そうして、錬成場から大佐は退出していった。大佐は雨の日は無能だから、その弱点を補えるのならば、それは奥の手として敵を騙して、必殺の技を出すことができる。何もない虚空から炎を出すのは、投影にあたるので、これから彼らにやってもらうために、見ててほしいからだ。

 

「では、次に投影を行う。この術は、魔術のテリトリーだな。簡単に説明すると、自己内に存在するイメージを実体化させることができる術だ」

「えっ・・・無から有を生み出すんですか???」

「いや、無ではない。あくまでも心の中のイメージを有として扱い、無形なる有を、有形である有に変換する術が投影だ」

「はぁ~そういう考えがあるのかぁ。すごいな魔術って」

「兄さん、それってすごいことだね!」

「ああ。これがあれば、生体錬成も夢ではないんじゃないかな!」

「エド、確かにイメージの世界では、生体錬成は不可能ではないが、魂の錬成は、その場に生の魂があるかどうかで錬成が可能かどうかがきまる。アルフォンス君の鎧に魂を定着できたのも、その場に魂が浮遊していたからの芸当だ。決して、既に肉体が朽ちてしまった人間を人体錬成で魂を呼び戻すことは、できないからな」

「そうなのですか・・・やはり死人は呼び戻せないんですね」

「そうだ。では、授業に戻ろう」

「はい」

 

「投影は、先ほどの二重丸の錬成陣の外周を変えて行う。内周の錬成陣には、再構築の錬成陣を明記するだけでいい」

「えっ。理解・分解の明記はしないくていいんだ?」

「ああ、媒介とするのは、術者の心のイメージを利用するからだ」

「では、錬成して見ろ」

 

二人は、錬成魔陣の錬成陣を明記した。心の中で思い出した武器を投影しようと決めた。

 

そして両手を合わせて、投影した。

 

バリバリバリ・・・・・・

 

すると二振りの剣、イシュヴァールの名剣のようなものを投影した。鋼の剣だった。

 

「おお。あの武器を投影したか。どれどれ見せてくれ」

 

二人は、マイルズに武器を手渡した。二人の武器は、あの試験会場の観覧席での遠目で見ていたというだけであったが、歪な形は忠実に再現してあった。さすがに、効果と呪いは再現はできなかったものの再現率はとても高い。

 

「すごいな、二人とも!この再現率は、とても高いぞ。もう、強化と投影については、私が教えるほどではないな!」

「そうなんですか?やったな!アル!」

「すごいね、僕たち!兄さん!」

「・・・・・・しかしだ、さきほどの注意事項を守ってくれれば、君たちは錬成魔陣の術者と認めよう。もし、仮に人体錬成や生体錬成をした場合は、破門とするので間違うことのないようにな」

「はい。しません」

 

<まあ、実際のところ、教えた錬成魔陣の錬成陣で人体錬成をしても、できるのは、布で出来た人形だけだからな。成功することはできないだろう。そうした細工をしておいたからな>

<エミヤ、君という奴は、いじわるな面もあるのだな>

<優しさ、配慮といってくれよマイルズ>

 

そうして、兄弟は、投影を完成させ、マイルズの研究成果を実証していった。その経過はすこぶる早く、マイルズをうならせたほどだ。才能は十分にある。錬金術であるので、何かを変成させることについては飛び抜けた才能があるようだ。

 

そして時刻は19:00になった。試験終了から丸3時間経過したのだった。

 

「では、今日はこれくらいでいいだろう。二人とも、良い成果だったぞ」

「・・・ありがとうございました!(兄弟)」

「大佐、私はこれで寄宿舎に帰らせてもらいますね」

「ああ。了解した」

「では!」

 

そうして、試験より一週間が過ぎた。試験結果を、一人の判定するためには、多すぎる時間を要した。その訳は、マイルズの特有の錬成方法が議題で話されたからだ。

 

それは、その最終場面での話である。

 

議長であるブラッドレイ大総統は、重い顔をしながら、会議を聞いていた。

「彼の錬成陣は、奇妙な点が多数あった。あれを人柱にするのは、不可解な点が多数あるので、心配だ」

「いや、あれほどの逸材はいないだろう。現に大総統の私的図書館の書物を解読するほどの読者だぞ?」

「しかしだな、まだ奥の手を隠しているようではっきり言うと、怖いのだよ・・・・・・」

 

それまで、見ていた大総統が語り始めた。

「皆の者、静かにしたまえ、確かにマイルズ君は、手強い。私の"最強の目"をもってしても勝利することは不可能かもしれない。さらにまだ奥の手を隠している素振りを見せていたことは、確認している。だが、人柱としては、最も近い存在かもしれない。よって私の私見ではあるが、彼を錬金術師として推挙する。異論はあるかね?」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

沈黙が部屋に行き渡った。

 

「無いようだな。では彼には、"剣舞"の銘を与える。我々の計画の為の舞台で舞ってもらわなければ、ならないからな。その駒としての役者を演じてもらおう」

 

審査会議は、大総統の一声で終わった。こうした経緯があり、剣舞の錬金術師は誕生したのだ。

 

はたして、マイルズことエミヤは大総統の手のひらで舞うことは・・・・・・決してしないだろう。むしろ舞台を準備する側だ。その掛け合いを楽しむ存在だ。エミヤという存在は。

 

そして銘が決まり、通達がマスタング大佐の下にやってきた。そしてマイルズとエドワードが召集された。

 

マスタング大佐が語った。

「この度、一週間の長期にわたる特例の審議会が開かれた。そして最終審議会で、大総統の鶴の一声で、結論に至った。つまりは、合格ということだ」

「やったじゃないですか!マイルズさん!」

「ああ、安心したよ」

 

「それで、銘だが、実技試験で見せた剣舞から拝借して、これから背負っていくの名は"剣舞の錬金術師"だ」

「ほう。その名にふさわしく舞台で舞わせてもらおう」

「剣舞かぁ。皮肉っぽいところが良いですね!」

「ああ。しかし、私は舞台自体を作る法が趣味でね、大総統の手のひらで舞うより逆に舞わせてもらうよ」

「マイルズ、私の前でその発言は言うんだぞ?他の者の前ではそれは、軍会議ものだからな」

「そうですね。了解しました」

 

「そうだ。マイルズさんは、これからはどうするんですか?北に帰るとか?」

「そうだな。目的を達成してしまったからな」

「もし、良ければ、俺の故郷であるリゼンブールによりませんか?ちょうど、機械鎧の整備に行かないといけなかったもので」

「それより、鋼の、マイルズ君はもう中佐だ。錬金術師となったことで一階級相当となったのだよ」

「いいですよ。さんづけで。その方が好ましいですので」

「そうですか。では、マイルズさん、どうでしょうか?」

「そうだな。中央には滅多にこれないし、リゼンブールにも行ったことが無かったものでな、行ってみようかな。よし。行くぞエド」

「よし!ありがとうございます!」

 

「そうか。では、アームストロング少将には五日後に帰ると伝えておいたほうがいいか?」

「はい、お願いします」

「了解した。試験後の休暇として了承しよう。行ってきたまえ」

「ありがとうございます。マスタング大佐」

 

エドとマイルズは、退室した。部屋で一人、大佐はこれから起きるであろう事象にふけっていた。

 

「もう中佐か。大佐になる時期も早いな。ゆっくりしていることもできないか?まあ、いいか。ここは中央司令部。すぐそばに大総統府。すぐ呼ばれる日も近いな。それまでの辛抱だ。しかも北方司令部に強いパイプを作れたのが幸いだな」

 

そして、エドとマイルズは、この後に合流するアルフォンスと共に、三人は一路、リゼンブールのロックベル邸に向かうことにした。機械鎧の整備士で幼なじみである、ウィンリィに会うためであるからだ。

 

 

続く。

 

 

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お疲れさまでした。予定通り6000文字になりましたね。

 

で、剣舞の錬金術師の経緯も紹介できて楽しかったです。

 

これで一路、リゼンブールに向かう話になります。マイルズとの親交が深まるようになりますね。良いことです。

 

そんな感じです。

ではまた。