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小説の墓場

剣舞の錬金術師 第七話 「リゼンブール」

第七話「リゼンブール」

 

さて、ようやくリゼンブールに向かうエド達。スカーとの遭遇により時間が経過してしまったが、駅修復後の発の列車にのり、一路、目的地に向かいます。

 

****************

 

前回のスカーとの遭遇から半日が過ぎた。セントラル駅の修復が終わり、三人はリゼンブール駅行きの列車に乗った。そしてまもなく出発し、列車は白い蒸気を噴出し少しづつ速度を早めていった。

 

「よーし。仕切り直しですね」

「そうだね、兄さん」

「旅か・・・私はほとんどの時を北方の地で過ごしたので、他の地理は地図上でしか知らない。なので、これから行くリゼンブールにとても興味がある」

「いいところですよ。のどかすぎて、それ以外はないんですが」

「草原が広がっていて、牧場が広がっているんです」

「そうか。さぞかし、いいところなのだろうな。ブリックスでは、厳しい世界だったから、そのような平和な場所を休暇ですごすのならば、いい旅になりそうだ・・・ん?」

 

「すー・・・すー・・・」

「・・・まったく、また寝ちゃって。兄さんは列車にのると寝ちゃうんですよ。ゆりかごみたいなものなのかなー」

「そのようだな。にしても、こうしてみるとまだ子どもだというのに。危ない橋を渡り続けてきたのだな」

「はい」

 

少しばかり間を空けて、マイルズはアルに話しかけた。

 

「・・・そうだ。アルには、話しておくことがある」

「え?・・・僕にですか?」

「この話は内密にしなければならない」

「わかりました。大事なお話ですね」

「君たちに錬成魔陣を教えたが、あれも、エドが行っているように、錬成陣を記入する工程をすっとばして錬成することができる」

「そうなのですか。やっぱり兄さんが錬成陣の工程を飛ばしているように、マイルズさんもその工程を飛ばして、花瓶をダイヤモンドにしたのでしょうか?」

 

「そうだ。ここでなら、何でも質問していいぞ」

「じゃ、じゃあ、錬成光が赤色だったり、青色だったりしていたのは、何か違いがあるのですか?」

「青色は、錬金術の錬成陣の色だな。そして赤色は、錬成したものの属性の光だ」

「属性の光?錬成魔陣の色ではないんですか?」

「ああ。錬成魔陣で錬成するものによって、黄色だったり、橙色だったり、錬成魔陣には固定の色がないんだ」

「そうでしたか。ありがとうございます」

 

「・・・・・・アル君、まだ隠し持っている疑いがあるのではないかな?」

「はい、ありますが、それはまだ未確定なので、失礼にあたるかもしれません」

「私と君は軍人関係ではない。無礼もなにもないさ。言ってみなさい」

「はい。では、大佐が言っていた、赤い錬成反応は、もしかして賢者の石ではないか?という疑問です」

「ふむ。もう隠す必要もないか」

 

そうすると、マイルズは、軍服の胸元から一つの瓶を取り出した。その中には、赤い液体物が入っていた。

 

「賢者の石???なんですか。石ではないように見えますが」

「これは、賢者の石ではなく、天然の賢者の石という表現のほうが正しいかな」

「天然?ということは、人工の賢者の石というのもあるということですか?」

「ああ、そうだ。しかし、人工というものは仮説だがな。この天然の賢者の石は、レッドアイという鉱石から抽出できる」

「じゃあ、それを使って、僕たちの体を直すことも可能なのでしょうか?」

「いや、それには、異を唱える。これを媒体として確かに錬成することは可能だ。マスタング大佐に見せた時は、この石を使った」

「異を唱えるのは、どうしてですか?」

「ああ、これはな、一つの特殊な奇跡しか行えないということだ」

「一つの奇跡ですか?」

「そうだ。これは実質、英雄の召還という魔術の中でも高い技量を必要とする大魔術に使うための石なのだ」

「英雄の召還ですか?」

「そうだ」

「それをある実験の時に実行してしまってな、私、マイルズに魔術師の英霊が併存してしまったのだよ」

「召還をしてしまったのですか?」

「ああ。今話している者の本来の名前は、エミヤ・シロウという魔術師だ。このマイルズ・アインシュトーの体を共有し、魂の併存を可能としている」

「ええ!?同一の体に魂の併存なんて、できることなのですか???」

「錬成魔陣も、魂の併存も赤い宝石もすべて偶然の一致から起こったものだが、一ついえることは、どれも現実に起きているということだ。どうだ?信じてくれるかい?」

 

「にわかには信じられない話ですが、魔術の存在がいままで秘匿されてきたとしても、マイルズさんしか継承者がいなかったとしても、これほどのものが今まで発見されなかったのが不自然ですし、僕は、信じます」

「ありがとう、アル。ひとまず、この話は君との秘密の話としてほしい」

「そうですね。そのほうがいいと思います。兄さんにはまだ早い話ですね」

「すー・・・すー・・・」

「うん、良い寝顔」

「景色も変わってきたな」

 

マイルズが外に顔を向けると、一帯が牧草地帯であることがわかった。見渡すがぎりのだかな田園風景がひろがる。ここはリゼンブールの特徴的な風景の場所である。こうなれば、もうすぐ、リゼンブール中央に到着するころだ。中央といっても、駅がちょこんとだけあるような風景である。

 

「もうすぐ着きますね。兄さん、もうすぐ着くから起きてよ」

「・・・ん?寝てしまったのか。すいません。マイルズさん」

「いいさ。こうも天気が良くて列車に揺られながらなのなら眠たくなるさ」

「ありがとうです」

 

そして、まもなくリゼンブール駅に到着した。エド達は、駅出口をでて、一息深呼吸をした。

 

「帰ってきたー!」

 

と一言。

 

「確かにのどかなところだな。空気がうまい」

「僕にはわからないけれど、いい風景ですしね」

「アル、マイルズさん行きますよ」

 

そして三人は、ロックベル邸に向かった。エドの機械鎧整備士、ウィンリィに会うためである。

 

向かう道中、錬成魔陣についての話に言及した。

 

「マイルズさんは、錬成魔陣の錬成陣を書かなくても、行使できるんですよね?」

「ふむ。するどいな。エド。そうだ。錬成陣を書かずとも行使することはできる。しかし、正規の方法で行使したほうが、完成度は高まる。あとは熟練度だな」

錬金術とあまり変わらないんですね?」

「どんな方法でも、普遍的原則があるように、錬成魔陣もその法則は当てはまる部分もある。だがな、エド、空気中の魔力エネルギーが膨大ならば、熟練度が少なくても高位の錬成魔陣の行使ができることを忘れてはなならない」

「そうですよね。そういえば、マスタング大佐に、炎の錬成魔陣とか教えたんですか?」

「ああ、銘を拝する前にな」

「錬成陣をですか?」

「そうだ。雨の日でも有能だということを、教示したさ」

 

場所は変わり、中央司令部。

 

「はっくしょん!!」

「どうしました?風邪ですか?」

「いや、誰かが私の噂でもしているのかと」

「大佐の悪なる噂話じゃないですか?」

「何を言う。私がいかに有能かという話しだろう。そうだ。マイルズ君に習った錬成魔陣で、雨の日でも私が有能だということを今度証明しようじゃないか!」

「もうすぐ梅雨がきますしね」

「そうだろう?私の錬成陣とマイルズ君の錬成魔陣を融合したから、大丈夫だ。彼の錬成魔陣講座も受講したし、だいたいの研究方法も資料をくれたのでね、近々、国家錬金術師向けのセミナーでも開いてみようかと思うのだ。練丹術も気になるところだが、錬金術にすぐ展開できる錬成魔陣の方が魅力的だと思うのだよ。少々時間がかかるが、今までの錬金術を拡張できる魅力を持っている」

「その計画は追々やるとして、まずは目の前の仕事にとりかかってくださいね」

「あー。そうだな。仕方ないか」

 

場所は戻り、エド達に。

 

「今頃、くしゃみでもしているころだろうな!」

「そうだね。そろそろ、目的地に着きますよ」

「あの家か?」

「はい!」

 

そのころ、ロックベル邸では、ウィンリィ機械鎧の専門誌をじっくり読んでいた。

 

そこには、"新しい生体義肢技術"と高々と記事があげられおり、生体人形の第一人者"エミヤ・シロウ"の紹介がされてあった。髪をオールバックに、褐色の肌、そして特徴的なサングラスを常にしている姿は、ウィンリィの頭に焼き付き、その技術を欲した。

 

「ねぇ、おばあちゃん。この新しい生体義肢技術の記事読んだ?」

「ああ、読んだよ。毎度のことだからあまり期待していないけど、成長する生体人形ねぇ、まだ機械鎧のほうが生き生きしていると思うんだけど。何でできているのか不明だから、気持ち悪かったよ」

「そうだよね。でもこれなら、特別料金でガッポリ稼げるよね!」

「まあ、うまくいけばね」

「この人に会いたいなぁ。あって、その方法を学びたいなぁ」

「何言ってんだい、まだまだ機械鎧整備士としてもこれからなのに、最新技術に手を出して、もし失敗したのならどうするんだい?」

「それは、そうだけど、この人に師事できれば、その可能性は低くなるでしょ?」

「そんな宝くじにでも当たる確率より、ここでじっくり整備士としての腕を磨く方がいいんじゃないのかい?」

「そうなんだけど。うーむ。高嶺の花なのかなぁー」

 

ワンワン!・・・・・・

 

「ん?外が騒がしいね。誰かきたようだね」

「あ、そういえば、エドが来るとか何とか電話で言ってたっけなぁ」

「お得意さまかい。それなら準備しないとね」

 

ドアが開いた。するとそこには、軍人とエドとアルがいた。

 

ウィンリィの第一声は、エド達ではなく、マイルズに向けられた。

 

「え・・・・・・?エミヤシロウさんですか!?」

「・・・って、俺たちに声をかけるのが普通だろうが!」

 

エドワードのつっこみもむなしく、マイルズはその名前に一瞬驚いた。

 

<エミヤ、もしかして、機械鎧雑誌の効果か?>

<ふむ。そのようだな。いつものマイルズの風貌ではない、オールバックにしておいたが、あまり効果はなかったか>

<で、どうするのだ?>

<今の私は、マイルズ・アインシュトーだ。それ以上でもそれ以下でもない>

 

「ふむ。私は、マイルズ中佐だ。そのエミヤシロウというのは、人違いだろう」

「いいえ、あなたです!いくら髪型を変えてもわかるんです」

 

<ふむ。これはもう勘弁するしかないか>

<まあ、いいんじゃないか?エミヤ。有名人であることは使えるからな>

 

マイルズは、降参というばかりに手を挙げて、ウィンリィに一言語った。

 

「では、私が仮にエミヤシロウだったら、どうするかい?」

「弟子にしてください!と言います」

「そうか。それで何を実現するのかい?エドに生体人形の技術を投入する気かい?」

「それは・・・・・・目的としてはそうですけど、もっと最新の技術でエドや機械鎧をつけている人達の役に立ちたいんです!」

「ふむ。魂胆は良いな。困ったお嬢さんだ。いかにも、私がエミヤシロウという名で通っている者だ」

「やっぱり、そうだったんですね。私の名前は、ウィンリィ・ロックベルです。ここで整備士をしています」

「そうか。エドの整備をしているのだな」

「はい。まあ、あまりサイズが変わらないので楽していますけど」

「っちょ、身長が延びないとからサイズが小さいとかじゃないだろうな・・・」

「そうそう、だから微調整が必要なんですよね」

 

エドは怒りをどうにか抑えた。

 

「ふっ。これくらいで怒っていてはだめだな」

「おっ。成長したね兄さん。グフフフ」

「なんだよ、アル、その笑い方は!」

 

アルはそういうと、外にでてエドの怒りの矛先になるように、庭を走りまわった。それにエドが追いかける構図だ。

 

「邪魔者は居なくなりましたね。エミヤさん」

「そうだな。エド達を掌握するのに長けているな」

「そりゃあ、昔からの幼なじみの間柄ですし簡単ですよ」

「そうか、それほどに思う気持ちがあるのなら、生体技術の弟子として迎えよう。しかし、私は軍人だ。いつもそばで直に教えることはできない。そして、その生体人形には、私が独自で継承している錬成魔陣という錬金術がらみのこともできなければいけない。もちろん、生体人形に特化した錬成陣を覚えるだけでいい。戦闘用のものは教えないから時間短縮になるだろう」

「やっぱり、一筋縄ではいかないんですね」

「そりゃそうだ。でも、君は前を進む者だろう?」

「はい。真剣ですから」

「その意気込みはよしとする。では、おばあさん」

「ピナコだよ」

「ピナコさん、水1リットルと何でもいいので肉を用意してもらえませんか?」

「水はいいとして、そうだね。干し肉でもいいのかい?」

「はい。大丈夫です」

「ちょっと待ってくれ。すぐ用意するよ」

 

ピナコは、奥の台所に向かっていった。

 

「エミヤさん、これからなにをするのですか?」

「人体錬成のようなものをする」

「じ、人体錬成ってエドやアルが失敗したものですよね!?それをやるってどういうことですか!」

「いや、人体錬成のようなものだ。正確にはそれではない」

 

台所奥からピナコがでてきた。

 

「準備できたよ。牛の干し肉と水1リットルね」

 

ピナコは、テーブルにそれを乗せた。すると、エミヤは、懐から錬成陣が描かれた紙を取り出した。そこには錬成魔陣が描かれていた。

 

ウィンリィ、髪の毛を一本頂戴できるかな?」

「え、はい、これでいいでしょうか」

「いいぞ」

 

エミヤは、ウィンリィからもらった髪の毛を、錬成陣の中央に置いた。

 

「これが錬成魔陣による人体錬成の構図だ。まだ研究段階なので、生きた生物は錬成できないようにしてある。では、これに手をあてるんだ」

「は、はい」

 

ウィンリィは、錬成魔陣に手を当てた。すると、錬成陣が光だし、そばに置いてあった水と干し肉が中央の錬成陣に収縮するようになり、物体を形作った。それは、牛の形をした生肉だった。

 

「す、すごい!手を当てただけで、干し肉が生肉になったなんて!」

「この錬成陣には、特殊な仕組みがされてな、特定の人物がさわると発動する仕組みにしてある。そのためにはその人物の体の一部が必要になってくる」

「それが、さっきの髪の毛ですか?」

「そうだ。いいぞ。理解しているな。もちろん、錬成魔陣の理解が進めば、構築式も描けられるようになる。しかし、このことは、エドとアルには秘密にしておくように」

「え、なんでですか?伝えれば、もっと理解が進むのに」

 

「それは、彼らにとって、日常の存在がウィンリィ、君だからだ。君まで錬金術関連の非日常の存在となってしまっては、彼らには帰る場所がなくなってしまうからだ。彼らから聞いた話だと、もう帰る場所がないそうじゃないか。彼らから最後の砦である、日常を除外してもいいのか?」

 

「そ、それは・・・・・・そうですね」

「教示する方法は、手紙で行う。そこに錬成陣の書き方から実行方法、サンプルも添える。ようは通信講座として教示することになる。それでいいな?」

「はい!」

「では、この錬成した生肉でごちそうを私が作ろう。ピナコさん、キッチンを借りてもいいでしょうか?」

「いいさ。にしても錬成した肉はちゃんと食べれるんかね?」

「大丈夫ですよ。問題ありません。実験で何回も食べましたが、肉質は生肉よりもおいしいですよ」

「そうか。それならいいが」

 

キッチンにエミヤは向かおうとした。

 

「やったー!!」

「宝くじにあたったようなものだね」

 

エミヤは立ち止まった。

 

「しかし、機械鎧の研磨は、しておくように」

「へ?なんでですか?」

「これから行う生体人形の基礎技術は、機械鎧と共通しているからだ」

「わかりました!」

「そろそろ、彼らが戻ってくるころだ。言葉は慎むのだ」

「はい。エミヤさん!」

 

さんざん駆けめぐって、疲れたエドは、怒るのをやめて帰ってきた。

 

「あーあ、疲れた。疲れた。まったくアルは走るのが早いよ。まったく」

「この体でよかったところは、疲れないということだね。フフフ」

「くぁーウィン・・・・・・」

 

エドは、ウィンリィに声をかけようとしたが、恍惚とした表情をしていたので、声をかけるのをためらった。しかし、アルはためらうことなく声をかけた。

 

「ウ、ウィンリィ?どうしたの?」

 

「あ、う、うん何でもないの。ちょっとうれしかったことがあったから、浸っていたの。で、エド、今回は定期メンテのことで来たの?」

「そういうこと」

「ところで、あのマイルズさんとはどこで知り合ったの?」

「ああ、中佐ね。中央司令部で、国家錬金術師の資格を取得するために来ていたんだよ」

「え?ということは、マイルズさんも国家錬金術師なの?」

「そうだよ」

「でも、一緒にくるってことは、なんかまた訳ありとか?」

「いや、中佐が知っている錬成魔陣ていう技術で元の体に戻れるかもしれないから、一緒に同行しているんだよ」

「そう。ならいいの」

「なんだよ、何か言いたいなら質問しろよ」

「危ない橋を渡っていないならそれでいいわ」

「?」

「じゃあ、腕を貸して。整備するから」

「お、おう」

 

エドは、ウィンリィによって、スペアの腕と足に交換した。右腕と左足の神経の離脱には痛みを伴うが、それを毎回するのもあと何回すればいいか数えるだけになるだろう。ウィンリィが生体人形技術を駆使できるころには。アルは、キッチンでマイルズのサポートをしに行った。

 

「やーっぱり、毎回のこの神経を離脱、再接続するときの痛みを軽減できないものかなー」

「できたらどうするの?」

「そりゃあ、いいけどさ、機械鎧の仕様なんだろう?痛みを伴うのは?」

「でも、最新の技術を習得できたら、その痛みを感じずにできるかもしれないよ?」

「その日がくる前にはやく元の体に戻れればいいんだけど」

「ねぇ、エド?」

「なんだよ」

「う・・・うん。なんでもないよ」

「?なんだよ」

「だから、なんでもないって言っているでしょ!」

「そうか」

「明後日には、また行っちゃうんだよね?」

「そうだな。長居はしてられないからな」

「また、遊びに来てよね?」

「なにを行っているんだよ。またくるさ」

「なら、よかった。じゃあ、集中するから、食堂室にでも行ってきてもらえる?ばっちゃんの話し相手になってあげて」

「ああ、了解した」

 

整備室に一人になった、ウィンリィは、決意を再度思いつつ、整備にとりかかった。三日で実現するには、丸三日徹夜でやるということだ。寝食も忘れて行う根気がいる作業だ。第一日目は、今まで没頭して整備してきた中で一番もっとも集中できるように感じた。

 

エミヤは、一人個室を借りて、ウィンリィのための通信講座のための資材を作っていた。研究書・教材は、中央図書館で登録した書物を参考にしてつくってある。サンプルの構築式、見本の発動しない錬成魔陣など、資料として完成度をたかめるためだ。

 

二人がそろって、部屋に引きこもっている間、エドとアルは、母さんの墓参りに行った。ようやく、マイルズに出会って、目的が近づいているということを報告したかったからだ。

 

「ようやく、ようやく目的が見つかるようだよ。お母さん」

 

エドが語ったあと、二人は黙祷を捧げ、帰宅した。道中、下を見ながら感傷に浸っていたが、ロックベル邸につくと表情をいつものようにしていた。その日も、夕食には、ウィンリィはこなかった。

 

「ばっちゃん、ウィンリィは食事はとっていないの?」

「サンドイッチはもってったよ。軽く食べれるからね」

「そうっか。ありがとう。ばっちゃん」

「あんたが代わりに感謝するのかい。まあ、いいがね。そういえば、マイルズさん、あんたが作った牛肉の煮物はうまいね。今まで食べたことのない味がしたけど、なにを調味料にしてみたんだい?」

「台所にあった大豆を原料に、錬成魔陣でシンの国に伝わる、醤油をつくったんですよ。本来は発酵工程があるのですが、むりやり錬成で瞬時に作成しました。まだ残りがあるので、空き瓶にいれておいたので、使ってください」

「ほぉー。錬金術は、料理にもできるんだね。それはいいことだ」

「すごいですね」

「工程を吹っ飛ばして強引につくるので、エネルギーは消費するが、錬成する姿さえ思い浮かべられるのなら、つくれることは確かだ」

 

その二日目は、料理談義で締めくくった。そして三日目の朝、ウィンリィが徹夜してメンテナンスしたものを、ピナコが接続した。そのために、一時間早く起きたエドはそのまま、アル、マイルズに早めに出発しようと提案した。それを受けて。

 

「ちょっと用があるので、先に行ってくれ」

「了解。道はずーっとまっすぐいけばいいし、わかりますよね?」

「ああ、大丈夫だ」

 

「じゃあ、ばっちゃん!行ってくるよ」

「ああ、いってきな!」

 

エドとアルが見えなくなったとき、家の方から、ウィンリィがでてきた。

 

「あ、もう行っちゃったか。ん?エミヤさんは行かないんですか?」

ウィンリィ、決意のことを思い出せるか?」

「あ・・・・・・は、はい!」

 

その様子を見た、エミヤは、玄関先に置いた大きな包み箱を指さした。

 

「最初の課題とその教材をいれてある。最初の課題は、"我は点であり真空。しかし確かに存在する。その存在は何か"である。この答えを封入してある機材を使って発信せよ。これが最初の課題だ」

「はい!ありがとうございます!」

「最初の課題を解決するのに、一週間くらいかかるだろうな。君ならすぐ理解するだろう」

「ピナコさんのためにも、錬成魔陣の習得は大いに役立つだろう。ではまた」

「?」

「料理にもその錬成魔陣とやらが使えるのさ」

「わかりました!」

 

そうして、マイルズは、弟子を三人もつことになった。秘密の話ではあるが。

 

「あ、マイルズさんが着いてきたよ」

「ん・・・・・・っとなにを話してきたんだろうな?」

「いや、申し訳ない遅れてしまったようだな」

「大丈夫ですよ。セントラル行きの列車はあと5分ですから」

「そうか。またゆっくり行けるな。そうだ。君たちに新しい課題を与えようか"我は点であり真空。しかし確かに存在する。その存在は何か"この問いを答えるんだ」

 

三人は、列車にのった。席に座る。

 

「"我は点であり真空。しかし確かに存在する。その存在は何か"かあ。空気とか?」

「おしいな。もう少し大きな観点で見てほしい」

「んーと。真理かな?」

「おーアル、いい線いっているな。もうひとふんばりだ」

「神、絶対者、原因たる者とかか?だとしたら、真理と同じ語原じゃないのか?」

「正解だ。エド、絶対者が正答だ」

「この問いには、どんな意味があるんですか?」

 

少しの間、マイルズは考え込み、ふと話した。

 

「錬成魔陣は、その絶対者への信仰をエネルギーにして行使するのだよ。まあ中には特殊なものもあるがね」

「信じるということでしょうか?」

「ああ、そうだアル。自然に対する感謝の思いが錬成魔陣が周囲から吸収するエネルギーの上限を決定づけるんだ」

 

「ふーん。要は精神集中して錬成陣を行使すればいいんでしょう?」

「それでは、錬金術程度までしかできない。魔術の流れを汲む錬成魔陣の真価を発揮するには、信じる情が大事なのだ。もちろん、宗教家になれというものではない。大自然を信じるのもよし、大宇宙を信ずるのもよし、または、誰かを信じるのも錬成魔陣の行使となる」

「それなら、俺にもできるな!神様なんか信じちゃいねぇからな」

 

「本物なのならば、できるさ。諦めかけても、それでも信じる先に必ずいる」

「はい」

 

マイルズは、鞄から封筒を取り出した。

 

「この中に、錬成魔陣の資料とサンプルが封入されている。私がブリックスに行った後でも、これで試せるだろう」

「いいえ、受け取れません」

「・・・・・・まさか、着いてくる気か?」

「はい!だって実験が行われている場所がその要塞にあるのなら、行かない手はないじゃないですか!」

 

「しかし、エド達には、セントラル周辺に居てもらわなければならない理由がある」

「その理由とは?」

「私は、生体人形の権威として、機械鎧専門誌に記事を連載していてな、その代筆をお願いしたいんだよ」

「民間の無線会社に頼めばいいんじゃないですか?」

「いや、これは信頼できる人物に頼みたいのだ。かつ、錬金術の理解がある人物をだ。その封筒には、無線の使い方が明記されているから、中央司令部で無線機の貸し出しを行っているから、それで行ってほしい」

「そうか、仕方ないか。でも無線機って大きいですよ結構」

「それは、心配は無用だ。私が開発した最新の無線機は、従来の半分の大きさで、携行できるようにできている」

「なんでもできるんですね。マイルズさんは」

「そうでもないさ。中身を空けてもらうとわかるが、錬成魔陣で動いているようなものでね」

 

エドは、無線機の裏蓋をはずした。そうすると、錬成陣が様々な部品に明記されており、機械の配列というものではなかった。

 

「うわぁ。こりゃすごいな」

「だろう?増幅させる錬成魔陣を多様して電池を形成し、空気中のエネルギーを魔力エネルギーに変換し、電力として電池に蓄え続けるんだ。受信、発信もできるものだな」

「永久回路じゃないですか」

「そうだな。錬成魔陣の奥義は、永久的な魔力を使うことができるところにある」

「だから、秘匿されてきたんですね」

「ああ、そうだ」

「すごい話しですね。でも俺は寝ます・・・・・・すぴー」

「また寝ちゃったよ、兄さん」

「ハハハ。眠くなるような話をした私の所為さ。これからじっくり時間をかけて教育していくのだ。心配は無用だからな」

 

「ふがいない兄ですが、よろしくおねがいします」

「ああ、いいぞ。」

 

 

次回へつづく

 

 

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どうも。天論です。

 

剣舞の錬金術師のリゼンブール回が終わりましたね。話しの都合上、飛ばして読んでも大丈夫なようにはつくっています。

 

あと、初の一万字越えです!

 

少しづつ慣れてきたのでしょうかね。

 

ウィンリィがエミヤシロウへの弟子入りしましたね。通信教育でやっていきますよ。今後、また通信教育の弟子が増えるかもしれません。中央司令部にて。

 

ではまた。