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小説の墓場

剣舞の錬金術師 第05話 外伝「焔の錬成魔陣」

第05話 外伝「焔の錬成魔陣」

錬金術のトレーニングルームでの出来事。
外伝と呼んでいますが、本編に影響ありです。

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国家錬金術師試験の筆記試験が終わり、錬金術のトレーニングルームにて、エルリック兄弟に錬成魔陣の手ほどきを終えたときだ。中盤に、ロイ・マスタング大佐に焔の錬成魔陣を教えることを約束していた。その番が回ってきたのだ。

「よし、二人とも、これで君たちに現状で教えることはない」
「ありがとうございます!マイルズさん!」
「本当に感謝しています!」

そこに、順番を待っていたマスタング大佐が入ってきた。

「マイルズ君、私にも伝授してもらえないだろうか?」
「いいですよ。大佐。大佐には強化ではなく投影がふさわしいですね」
「そうだな。強化するにしても着火布ぐらいしかないのでな、スペアがあるから必要はなさそうだ」
「それでは、この普通の手袋に今から、錬成魔陣を印字しますので、これを使ってみてください」
「了解した。よろしくたのむ」

すると、マイルズは、普通の革製の手甲に指でなぞるように炎の錬成魔陣を明記した。通常の5分の一の表記スペースだったが、目に見えないほどの高精度の描写を成し遂げた。これは魔術的な手法である。

「すごいな。印字するのも錬成魔陣でやるのか?」
「いえ、これは魔術です。魔導書の複製などに使われる技術です」
「そうか。これは高度だな。これは易々とできないはずだ」
「まあ、錬成魔陣でもできる方法がありますので、大丈夫です」
「そうか。そうでなければ、着火布の準備ができないからな」
「よし、完了しました」

できあがった紋様は、二重円でできており、歪な文字が印字されていた。内円は従来の錬金術で明記されており、ロイでも認識できる。しかし外円の紋様はこれまでみたことがなく、霊妙な印象を受ける文字で記されている。

「これが焔の錬成魔陣か」
「はい。この魔法陣は、通常の赤い炎より一段と高温な青い炎を標準で放つことができるものです」
「ほう。それはいいな。ガスコンロの青い炎のような安定した炎が出せるのはいいことだ」
「また、炎の剣も持てることができます。そのためにはイメージするのが必要となりますが・・・」
「あとは、試してみてからいいだろうか?」
「あ、はい。確かにそうですね。ではまず、魔力弾の扱い方を伝授しましょう」
「魔力弾とは、ライフルのように炎を扱えるのか?」
「はい。錬成魔陣には標準で拳銃のように放つことができます」

ロイは、マイルズから手渡された着火布を利き腕に装着し、拳銃を構えるように、人差し指で拳銃のポーズをした。

「いいですね。それで小さい弾丸をイメージしてください」

人差し指の前に、円形のミニトマト大の大きさの魔力弾をイメージした。最初はろうそくのような大きさの炎だったが、徐々に大きくなり、大玉トマトのような大きさになった。

「それを回転させてください」
「うむ」

回転した炎は安定した球状になり、青の球になった。

「それを、300メートル先にある的に当ててください」
「いいだろう!」

すると、無意識にロイは、眼力強化の魔術を行った。魔術の素質があるようだ。それを証明するのはこのあとの結果次第である。

シュパッ!・・・・・・ヒュン!・・・・・・バキャ!

的の中心に命中した。

「!」
「・・・ふーっちゃんと命中したが」
「まさか。マスタング大佐、もしかしてあの300メートル先の中心の的が見えるのですが?」
「ああ、そうだ。しかと鮮明に見える」
「ちょっと、大佐の魔力診断をしてもいいでしょうか?」
「判定か?いいだろう。やってみたまえ」
「はい。ありがとうございます」

マイルズは、解析の魔術を駆使し、大佐の魔力エネルギーを解析した。案の定、強化の魔術を駆使している結果になった。これは良好な結果であるが、錬成魔陣と魔術は異なる系統の魔法であり、特性を対処することなく、混同すると魔力暴走が起きる場合がある。しかし、強化の魔術ならば、交差することがないので、問題は無いのだが。

「やはり。大佐、無意識で眼力の強化をしているようです。通常なら、あの距離の的が明確に見えることはありません」
「そうなのか?たしか魔術は遺伝で伝われると聞いたが?」
「はい。ですがごくまれに魔術の特性を生まれ持っている場合があります」
「そうか。ということは、私にも魔術が使えるのか?」
「はい。どのような魔術が得意なのか、その個性を見極めるには、時間がかかりますが、強化の魔術が使えたのならば、もっと精度の高い魔術も行えるかもしれません」
「おお!それはいいな!是非とも、ご教授ねがいたいものだ」
「では、そうですね。人体強化の魔術ができたのなら、物質強化の魔術を行いましょう」

エミヤは、懐から、魔術のためのスイッチを作る宝石を取り出した。その宝石は、心の中に強制的に魔術の身体にするための薬のようなものだ。依然、エミヤもこのスイッチによって魔術師としての才能を開花させた経緯がある。

「大佐、これを飲んでもらえますか?」
「これは、ルビーではないか?飲んで大丈夫ではないだろう・・・」
「これを飲みこみ、大佐の中に魔術師としてのスイッチを強制的につくります。そうすることで魔術エネルギーを手に取るように利用することができます」
「そうか。ならやってみてくれ」

エミヤことマイルズは、ルビーを飲み込んだ大佐の胃を起点に、魔力エネルギーをそそぎ込んだ。

<ん?エ、エミヤ、そのルビーは>

「あ、しまった!」
「うぐっ・・・カハッ!!!!」

それまで、見学していたエドワードがロイの姿を見て叫んだ。

「!・・・・・・大丈夫ですか!大佐!」

吐血までいかないが、せき込む大佐をみて、尋常ではないことを感じたようだ。つまり、エミヤがルビーだと思って大佐に渡したものは、精製されたレッドアイを固めたものであった。

大佐の身体から赤の魔力光が発する。そして、

<なんだ!この感覚は・・・・・・>
<・・・・・・召還に従い、ここに見参した。サーバントアサシン、佐々木小次郎というものだ>
<誰だ、貴様は・・・>
<うむ?ここはお主の心の中か・・・なんと不思議な場所に召還されたようだ。私の名前はさきほどいったとおり、侍だ。こちらの世界では剣士といったほうがいいだろうな>
<!>
<驚いた顔をしているな。本来は私は実体化して顕在するのが普通なのだが、此度は、心の中に顕在してしまったようだ。さて、主と呼んでいいだろうか?>
<ああ、構わない。しかし、小次郎といったな?なぜ君は私の心の中に出現したのだ!?説明をしてもらわないとわからない!>
<主、混乱しているようだが、何か主の体内に何かを注ぎ込んだのではないか?異物が混入しなければ、心の中にサーバントが召還されることなどは不可能だろう>
<さきほどの魔力を帯びたルビーだろうか>

「大佐!・・・大佐!」

ロイは、心の中の会話から立ち戻った。ロイを呼ぶマイルズの声に立ち戻ったのだ。

「大丈夫ですか?大佐!先ほどのルビーだと思っていたのですが、あれは別の宝石でした。すいません!何か、心象的に違和感が起きていないでしょうか?」
「ああ、大丈夫だ。このように丈夫だよ。にしてもさきほどの宝石は、ルビーではないのだな?」
「はい。あれは、ブリックスでしか産出されない鉱石です。名前はレッドアイというものです。それを精製したものが、さきほどのものになります」
「そうか。なら安心するがいい。特に問題はないから大丈夫だ」
「そ、そうですか。安心しました」

<エミヤ、大丈夫なのか?>
<うむ。まったく、うっかりしてしまったようだな。俺は>
<まさか、君と私と同じように、大佐の中に何かが現界しているのではないかと思ったのだが>
<その可能性は高いな。しかし、大佐ならばうまくことを成しているだろう>
<そうなると、さきほどの反応は現界している証拠になるな>
<ああ、レッドアイを体内に吸収しての結果は二つに一つしかない。死ぬか・・・生き残り、サーバントを心の中に召還する二つだけだ>
<そうだ。マイルズ。にしても成功率が高いことが生き残った結果だったか。そういうことなら、何が現界したか調べることにしよう>

マイルズにエミヤが表出した。

「大佐、そのレッドアイという鉱石を摂取すると、魔術特性が顕在化し、その行使ができるようになるのです」
「そうか。では、試してみよう」

<わかるか?小次郎>
<うむ。私は魔術師ではないが、その特性とやらは、わかる。つまりは 私の剣技について言っているのだろう>
<剣技と?>
<そうだ。私の剣技は、必殺の剣技でな、それが特技として表出するのならば、魔術特性として検討されても不思議では無かろう>
<なら、やってみてくれ>
<わかった>

ロイに小次郎が表出した。

「マイルズ、細身の日本刀を投影してくれないか?」
「・・・!日本刀ですか?」
「ああ、日本刀だ」
「・・・投影します」

エミヤこと、マイルズは、大佐の言うとおりに日本刀を投影した。この時点で、サーバントがロイの中に顕在していることが判明した。その理由は解るとおり、このアメストリスの世界に日本という国があるわけがないからだ。異世界なのにその国の武器を投影するのだから、サーバントは十中八九日本のサーバントであろう。そして英霊として日本の有名なサーバントは限られる。

「投影・・・・・・真名"物干し竿"投影完了した」(エミヤ)
「おお。その剣がほしかったのだ。よくぞ投影した。感無量だ」(小次郎)
「やはり。佐々木殿と呼んで良いのでしょうか?」(エミヤ)
「ふむ。ということは、マイルズ、君もそうなのか?」(ロイ)
「はい。私には弓兵がおります」(マイルズ)
「そうか。すると、レッドアイには私たちを呼び出す何かがあるのだな」(小次郎)
「はい。そうです」(エミヤ)
「うむ。よろしい。では、この剣技を試そうではないか」(小次郎)
「御意に」(エミヤ)

ロイは、初めて長い日本刀を持ったのにも関わらず、その立ち振る舞いは、剣豪としての貫禄が漂っていた。そして、独特な構えとしたかと思うと、ロイは、刀を一太刀、放った。目の前にある仮装人形を目前にして。

「秘剣・燕返し!!」

シュパン!!!

しかし、放った後の人形の切り傷は三つだ。これは、つまり、同時に一太刀で三つ同時の攻撃をしたことになる。多重屈折運動。である。本来は宝具として認められるものだが、小次郎には、英霊としての宝具は存在しない。彼には、秘剣としての剣技がそれに該当するものだ。

「おお!やはり、佐々木殿の剣技は秀逸の極みですね」
「そう、賛美するでない。恥ずかしいだろう」
「?」
「・・」

エドとアルはポカーンとしている。そりゃあそうだ。今まで上官と兵士との関係だったのが、一転して和気藹々とした友と語り合うような関係に一変したからだ。

「大佐とマイルズさんってそうとう仲が良かったんだ」

エドは一言呟いた。それを知ってるのかどうかは、わからないが、エミヤは発言した。

「ふむ。エドとアルには説明しておかないとな。これは他言無用の秘密だから、口外したとしたら、錬成魔陣の術者としての信用を破棄するぞ?」
「えっ・・・・・・そんなに重要なことなんですか?」
「ああ、私の秘密に関わることだ」
「わかりました」
「兄さん、そんなに早く決めないでよ!」
「だって、そうだろ?俺たちの秘密も交換したんだ。マイルズさんの秘密も共有しないと割が合わないだろう?」
「そうだけど。んもう。兄さんたら・・・」

他に誰もいないことをマイルズは確認すると、語った。

「私の中にはもう一人、別人格の男が住んでいるのだ」
「え?別人格が?多重人格の障害ではないのですか?」
「いや、共存しているので多重人格のよりも明確で、鮮明であり信頼関係を構築している。彼らの名称は、サーバントという存在で、彼の名前は、エミヤシロウという。彼は、魔術を得意とし、その中でも刀剣類に秀でた才能をもっている。彼の魔術と錬金術を組み合わせた錬成魔陣は彼の発案できたものなのだよ」
「はぁー。すごいですね。その言い方だと、ごく最近のことのように聞こえますが」
「そうだ。まだ出会って四ヶ月しかたっていない仲さ」
「そうなると、大佐にも誰かが存在しているのですか?」
「そうだ。鋼の。私の中には、剣豪が存在している。彼の名は佐々木小次郎。さきほどのエミヤシロウと同じ国の出だ。だからといって、この世界に存在しているとは限らないがな」
「え?この世界に存在していないってどういうことなんですか?」
「それは私から話そう。私はエミヤシロウだ。エド、アルには初めましてだろうが、錬成魔陣を教えるときに表面に露出していたのは私であるから、二度目だな」

エドとアルはペコリとお辞儀した。
「よろしくお願いします」

「よろしい。では話そう。私たちサーバントは、異世界で英雄が昇華した存在のうち、世界と契約を結んだもの達の成れの果てだ」
「だから、魔術が今まで隠匿されてきたと言ったんですね?」
「その通りだ。そこでさきほどのレッドアイという鉱石があるのだが、あれが、構造ははっきりしていないが、サーバントを召還する機能を有していてな、人間には今のところ100%の成功率でサーバントを心象風景に滞在させることができるのだ。執事のような役割に位置する」
「ということは、俺とアルのような密度な連携プレイができるということで意味は通じるのでしょうか?」
「ああ、そうだな。兄弟が一つの身体を共有しているようなものだな。いい表現だ」
「わかりました。この事は、誰にも話しません。こうして誰もいないときに話題に出します」
「よし、その通りにしてくれ。大佐、詳しいことは、小次郎から聞いておいてください。本来私たちは、世界の座よりこの世界の情報を共有されるようですが、この世界にはそのようなシステムが無いので、小次郎から彼の得意とする刀の情報を共有しておいてください。いざというときに活躍しますので」
「ああ、了解した。彼とは一心同体だからな、うまくやるさ」

 


第六話につづく

 


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この外伝は、第五話の半ばくらいの話です。

外伝ですけど、これからの話に影響していくかもしれません。でもこれを作ったのは、十話くらいの時点ですので、本編に登場するときは、後になりますね。