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小説の墓場

剣舞の錬金術師 第08A話「綴命」

第08A話 外伝「綴命」

さて、どういう人物に会うかわかるとおりである。エミヤの正義の味方にこぼれる存在はいない。ここで登場する彼は幾分か極悪人というよりかは、ましなようです。

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午前5時。マイルズは、休暇の残り一日を消化しに、イーストシティにきていた。ある人物に会いにきたのだ。名を綴命(ていめい)の錬金術師"ショウ・タッカー"と呼ぶ。イーストシティでキメラの権威と呼ばれている。そんな彼から深刻な相談を受けて来たのであった。

マイルズは、一軒の大きい家の前にやってきた。

「ここが、タッカーさんの家か?」

ワンワン!!

大型犬がこちらを見て吠えている。すると、家の扉が開いた。

「あ!お客さんだよ!お父さん!」

元気な少女の声だ。確か、ニーナという少女だ。その奥から、中年の男性がでてきた。

「ニーナ、声が大きいよ。あ、どうも。エミヤシロウさん、ようこそ。来ていただいて感謝しています」
「タッカーさんですね?」
「はい。綴命の錬金術師、ショウ・タッカーです。玄関での会話ではなく、部屋の中で続きをいたしましょう」
「そうですね」
「ニーナはどうしたらいいの?お父さん」
「ニーナは、アレキサンダーと遊んでいてくれないかな?エミヤシロウさんと大事な話があるから」
「うん!わかった。お父さん!」

ニーナは、庭を駆けめぐっているアレキサンダーと戯れている。

「元気な子ですね」
「はい。ありがとうございます」

タッカーは、厳重な扉を締めて、リビングにエミヤを通した。

「こちらへどうぞ」

エミヤは椅子に座った。

「コーヒーでいいでしょうか?なにぶん、妻に出て行かれてから、家事はあまりうまくいってないんですよ」
「ええ、お構いなく」

コーヒーを二杯のカップに注いだ。

「お先にお礼として、私のために来ていただいて、ありがとうございます」
「いえ、いいのですよ。私も生体系錬金術の研究者として、権威の方に会えるのなら、いいことですから」
「そのことなのですが、巷では権威と呼ばれては居ますが、実際には成功例はかんばしくないのです」
「そうなんですか?合成獣が得意なのではないのですか?」
「お恥ずかしい話、成功例は二年前の一度きりでして、それ以降は失敗ばかりなんですよ。満足のいかないことばかりで。人語を介せるのは一度きりでした」
「そうですか。それで私に相談したいことは、人語を介せる成功例を実現するためですか?」
「はい、恐縮ですが、その通りです・・・うぅ」
「泣かないでください。まだ私も生体研究を始めたばかりですが、実現できる方法は知っています」
「えっ!本当ですか!!ぜ、是非、教えてください!よろしくおねがいします!!!」

「そのためには、二年前、何と何を錬成したのか、ここで洗いざらい真実を語ってくれるのなら、それと等価交換致しましょう」
「そ、それは・・・」
「大丈夫ですよ。秘密にしますから。軍部には報告しません」
「・・・ということは、エミヤさんは、私が何と何を錬成したのか、もう予想がついているのではないのですか・・・」
「ええ、誰でも確実に人語を介する合成獣の錬成方法は、ただ一つです」
「・・・・・・」
「人間と獣を錬成すればいい・・・ですね?」
「・・・はい。反証はありません」
「そうですよね。そして二年前に奥さんが出て行ったということは、そうなのでしょう?」
「・・・ええ、そうです。だから、一言話しました。"もう死にたい"と・・・」
「よくぞ、真実を話してくれましたね。いいでしょう。交換条件は完了です。私の研究しているものをここで証明いたしましょう」
「ありがとうございます!ありがとうございます!もうあの声に罪悪感を感じないですむのなら、どんな証明でも私は!私は、もう禁忌を犯さずにすむのならっ!!」
「タッカーさん、興奮は抑えてください。これより奇跡を見せますから」

すると、エミヤは、懐から小瓶を取り出した。そして近くにあったネズミが入っているケースを持ってきて、その小瓶の蓋を開けた。

「これより、私が研究している鉱物との錬成実験を行使します。先に言っておきますが、成功率は今のところ、30%です」
「お願いします!」
「よし、いいでしょう!」

エミヤは、錬成魔陣を明記した布を取り出し、その上に、ケースと小瓶の内容物を上に乗せた。

「トレース・オン!」

赤い錬成反応がまぶしく起きた。すると、白いネズミの毛がみるみる青色になった。そして、立ち上がり二足歩行をした。そして第一声は・・・

「な、なに、俺、ネズミなのかぁ!??」
「しゃ、しゃべったぁ!?」
「おい、てめぇら、俺に何をしやがった!」

すると、ネズミは、どこから取り出したのかわからないが、小さな片手に赤い槍を持った。

「ん?この槍は・・・もしかして・・・おい、そこのネズミ!」
「なんだよ!戦うのなら相手になってやる!」
「貴様の名前は、クーフーリンだな?」
「なんだとっ!俺の名前を看破しただとぉ!貴様、どこの英霊だぁ!」
「やはりな」

「?何が、エミヤさん、何が起きているのですか?」
「タッカーさん、この先ほどの鉱物から精製したものはですね、幽霊の魂を実体化させる効果があるんですよ」
「魂の実体化ですか!?す、すごい!」
「しかし、タッカーさん、このことはまだ秘密にしておいてくださいね」
「なぜですか、これはすごいことじゃないですか!?」
「先ほども言ったとおり、まだ成功率は三割にしか満たないのです。まだ発表する時ではありません」

「おい!そこの貴様!さっきの質問に答えろぉ!」

すると、エミヤは青いネズミの尻尾を持ち上げて、ネズミを黙らせようとした。

「てめぇ!何をしやがる!」
「黙るのだ、マスターが誰なのかぐらいはわかるだろう?まさか、ネズミに召還されてそれがわからないくらいまで、落ちてしまったのではないだろうな。猛犬の異名は廃れたのか?」
「マスター?貴様かよ。英霊がマスターなんて、俺は認めねぇぞ」
「だが、私の血で精製したもので錬成したからな。ラインはつながっているだろう?」
「確かに魔力の流れがてめぇから伝わる。仕方ねぇな」
「ということで、タッカーさん、査定の判定が終わったら、このネズミは私が預かってもいいでしょうか?」
「はい、でも研究ができないのでは、また次回の査定が・・・」
「大丈夫ですよ、タッカーさんが北のブリックスに来て下されれば、向こう何十年分の査定を保証しますよ」
「え、そんな簡単な条件でいいのですか!?」
「ええ、一人の研究員として働いてもらうことになりますが」
「ど、どうか、よろしくお願いします・・・」
「了解です。その言葉を待っていました。では、急な用事ですが、本日中に査定をして、荷物をまとめて、この屋敷はそのままでいいですから、ニーナとアレキサンダーを連れてイーストシティ駅の南口に午後6時に来てもらえますか?前日査定はできますので、大丈夫かと思います」

タッカーは今度は大泣きして、涙ぐんだ。

「ありがとうございます・・・」
「タッカーさん、そう涙していては、娘さんに顔向けできませんよ?最悪の方法を回避できたのですから」
「はいッ!・・・本当に最悪の方法をしなくてよかったです・・・」
「よし、ということだから、ランサー、しばらくの間、タッカーさんに付き添ってくれよ?」
「ふむ。話はだいたいわかった。マスターとの誓いは守るさ。そこのおじさんを査定に通るように話せばいいのだろう?」
「そうだ。自己紹介をしてくれれば、査定委員も前回よりも進歩していると判断するだろう」
「わかったよ、で、タッカーだったけ?あんたもそう男がメソメソ泣くんじゃねぇよ」
「・・・はい。もう泣きません。では、ちょっと家を空けますので、ニーナを見ていてくださいませんか?」
「はい。どうぞ行ってきてください」

すると、ランサーはタッカー氏の肩に乗った。俊敏性はネズミになっても保たれているようだ。さて、宝具の性能はわからないが、サーバントを召還できたのはこれで三例目だ。最初はアーチャー・エミヤシロウ、次はアサシン・佐々木小次郎、そしてランサー・クーフーリン

エミヤは、余分に少将への手みやげもできたところなので、一安心した。庭にでて、遊んでいるニーナとアレキサンダーのところにやってきた。

「あ、おじさん、アレキサンダーが遊んでほしいって!」
「おー、わしゃわしゃわしゃ!」
「おじさん、はじめてアレキサンダーと遊んだのに、アレキサンダーが喜ぶことなんで知っているの?」
「犬の飼い方は、心得ているからだよ」
「そうなんだぁ!じゃあ、おじさんはニーナの師匠だね!」
「確かに、いろいろとアレキサンダーが喜ぶことをいっぱい、いっぱい、教えてあげよう」

<楽しそうだな。エミヤ>
<ああ、昔から犬を飼うことが好きだったからな。いろんな犬を飼っていたのだよ>
<犬博士だなこれは>

ちょうどそのころ、東方司令部では、査定室にて、ショウ・タッカーの査定が進行していた。

「タッカーさん、それで今回の成果はどうなさいました?」
「はい、前回より人語を普通に介せるキメラの合成に完了できました」
「なんと!たしかに前回のは一言だけでしたですしね」
「よし、ランサー、査定委員の方に自己紹介してくれ」

すると、さきほどからケースに静かに寝ころんでいた青いネズミが二本足で立ち上がり、、、それだけですごいことなのだが、こう語った。

「俺の名はランサーだ、よろしく頼みますよ。タッカーを」
「す、すごい!自己紹介とは、高度な人格のようですね!査定は合格です!」
「やったな!タッカーさんよ」
「ありがとうございます!!」

そんな歓喜の表情をしている頃、タッカー邸では、ニーナは荷物をすでにまとめていた。エミヤの指示にて、特に冬服を整理している。

「エミヤおじさん、なんで冬服ばかり集めるの?」
「これから寒いところ、雪が年中降っている場所に引っ越すからだよ」
「年中、雪が降っているのぉ?楽しいね!」
「でも、ほとんどは室内で過ごすことになるから、暖かい服装でいるんだぞ?ニーナ」
「わかった!そうするぅ!アレキサンダーはもっとモフモフにならないとね!」

ワンワン!

そう話していると、玄関の扉が開く音がした。

「帰ってきたな」
「・・・ただいま!ニーナ、査定に合格したよ!」
「本当?お父さん!これで、お母さんが帰ってくるかなぁ?」
「・・・・・・お母さんはね、遠い世界に先に行っちゃったんだよ、ニーナ」
「そこって、どれくらい遠いの?ぶりっくすより遠いところなの?」
「そうだよ、ニーナ。だから新しいお母さんを探しに行こう?」
「うん、わかったよ、だけど、お父さん、こんどは喧嘩しちゃあだめだよ?」
「ああ、誓うよ、ニーナ」

それまで、タッカーの背中に乗っていたランサーがしゃべり出した。

「親子水入らずの時には悪いが、早くしないと列車の本数が足りないんじゃないか?」

すると、

「しゃ、しゃべったぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁっぁぁっぁ!!!!」
「お、お嬢ちゃん静かにしてくれ!鼓膜が破れそうだ」

そして、一転して

「か、かわいい!青いネズミなんてはじめてみたー!」

中型のネズミのランサー頬ずりして、そのモフモフ感を楽しんでいる。

「おい!マスター、見ていないで助けろよ」
「いいじゃないか、これから一緒に暮らすのだから、な!」
「くらすぅぅ?」
「北のブリックス要塞で暮らすんだよ。今のうちに仲良くしておいてくれると助かるからな」
「ねぇ!このネズミ、なんていう名前なの?」
「う〜む。そのネズミの名は、クーリンだよ」
「ちょま、マスターその名前は・・・」
「クーリン!かわいい名前!」
「よし、クーリン、君の今日からの飼い主はニーナだ。ご主人様を守るんだぞ?」
「くー。仕方ねぇな。ニーナ、君は俺が守るぜ!」
「おぉー。クーリンかっこいい。キャハハハ!!」

そして、庭を駆けめぐった。アレキサンダーも一緒に。

「では、タッカーさん、冬物の荷物を整えて、夕方の6時に南口まできてくださいね?」
「はい!了解しました」
「ではまた」

そして、エミヤことマイルズは、昼食を食べに、イーストシティの有名なカフェに足を運んだ。すると、そこに思わぬ出会いがあった。


Bにつづく


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終わりました。綴命の錬金術師の救済です。彼を救わずして誰を救うのでしょうか。地獄にいかずにすみましたね。最悪の方法をせずに、ランサーに犠牲になってもらいました。ランサー涙目ですね。まあ、彼はそれでいいでしょう。俊敏性は大丈夫なのですから。